静岡新聞窓辺⑧(5月24日)掲載分
毎週水曜日のコラムもあと5回になりました。
先週はリーダーシップについて書かせてもらいました。
非常事態に『本物』の真価が問われるのだと思います。
A leader is a dealer in hope.
本物のリーダーシップ
東日本大震災から数ヶ月後、ボランティアとして被災地を訪れた時の事だ。
まだ現場は混乱しており、人々は長い避難所生活で心身を消耗していた。
避難所は、どこも雑然としていたが、1カ所だけ他とは全く雰囲気が違った。
そこには集団で生活を送るための自助共助の仕組みが整い、
強固な自治組織が出来上がっていた。
優れた管理人が秩序を作り仲間を見守っていたのだ。
避難所の庭には小さな畑があり花と野菜を育てていた。
花は避難所の人々が親族を弔うために野菜は食用に。
被災地入りしたものの名ばかりボランティアで
「役にたてている」という実感が持てなかった私は、
「ありがとう」と管理人から手渡された胡瓜の甘く瑞々しい味わいに泣きそうになった。
管理人自身、津波で大切な親族と経営していた会社を失っていた。
「こんなことで自分達は負けない、何度でも立ち上がる」と口にした。
人が集まると自然に組織ができあがる。
組織の善し悪しはリーダーの質で決まり、
強いリーダーの存在は組織に夢と希望を与える。
大局を俯瞰できる冷静さと利他心、高い人格。
本物のリーダーシップを見せてもらった気がした。
私達の事業にも多くの人々が関わっている。
皆に信頼されるリーダーであろうと気負うが、
日々「問題」が発生し思い通りにいかないことも多い。
自分の未熟さ不甲斐なさに滅入る。
リーダーシップは、試練と仲間が磨いてくれるのかもしれない。
時々あの強くて優しい管理人の顔を思いだす。
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